Mr.Robot感想S1E10 「決行」

 重大なネタバレを多く含みます。閲覧は自己責任で!
 S1完走済みorネタバレオーケーな方は☆白文字☆を反転してください。
 S2のネタバレになりそうなところは ★白文字★にしました。

 


【E10で起こったこと】

・クリスタがマイケル・ハンセンと会う。エリオットの逮捕に協力するよう頼まれる。

・エリオット、タイレルの車で目が覚める。計画が実行されたことを知る。

・エリオット、タイレルを探す。ヨアンナに遭遇するも見つからず。

・Eコープ副社長がアンジェラの目の前で自殺する。

・エリオット、Mr.Robotを呼び出すことに成功する。事の真相を聞き出せず終わる。

・FSociety、証拠隠滅のためのパーティを開催する。

・エリオットのもとを誰かが訪ねる。

・ホワイトローズ、EコープCEOのプライスと会う。

 

【登場人物】

・エリオット

 計画実行の直前から3日後まで意識を失う。姿を消したタイレルとMr.Robotを探す。

・アンジェラ

 Eコープで広報として働く。CEOのフィリップに目をかけられる。

・ヨアンナ

 自宅前でエリオットと遭遇。エリオットに探りを入れる。

・マイケル・ハンセン

 本名はレニー・シャノン。エリオットを逮捕するためクリスタに協力を頼む。

・フィリップ・プライス

 コルビーの紹介で入社したアンジェラを気にかける。ダークアーミーのトップであるホワイトローズと会談する。

・Mr.Robot

 計画実行時から姿を消す。エリオットに呼び出されこれからも自分と共に居ろと諭す。

・ダーリーン

 計画の成功を喜ぶ。ゲームセンター内に残った指紋をごまかすためパーティを開催する。

・ホワイトローズ

 EコープCEOのプライスと会う。ビジネスの話をする。

 

 

 クリスタと別れたはずのマイケル・ハンセン(もといレニー・シャノン)がいつぞやのレストラン『ピエール・ロティ』で彼女と会うところから。ハンセンはエリオットにハッキングされたことを話す。エリオットが盗んでいったハンセンの飼い犬、フリッパーには識別用のマイクロチップが埋め込まれており、獣医にかかったことで足がついてしまった。この6週間サイバー犯罪課がエリオットを追っているという。

 エリオットは絶対他の人間もハッキングしているはずだから逮捕に協力してくれ、と頼むハンセンだが、クリスタは「力になれない」と拒否する。ハンセンの「愛していたから許してくれ」とかいう物言いが気に食わなかったのかな。

 エリオットはエストニアのプロキシ(中継サーバー)を経由しているため、エストニアが国家崩壊でもしない限りは捕まえられない。自宅に戻るハンセンは意気消沈ぎみだが、そんなとき世界経済の混乱を伝えるニュースが。大規模ハッキングにより混乱の深刻な国は国家崩壊の危険すらあり、可能性が高いのはウクライナ、ルーマニア、チェコ、エストニア……おっ。★国家崩壊が噂されるほどの経済危機が起こっているということは、ハンセンがこのニュースを見ているのは59(ファイブナイン)攻撃の後になるのかな?

 

 タイレルの車の中で目覚めるエリオット。数日間意識がなかったようで、ブルックリン・コニーアイランドにあるFSocietyのゲーセンにいたはずなのにいつの間にか自宅付近まで戻ってきている。そしてタイレルの姿はない。

 

 Eコープに出社するアンジェラ。やはり提案を吞んだか。過度に緊張しているらしいアンジェラが社内に入ると、同僚たちはかなり忙しそう。「シャワーと着替えを(していて遅くなりました)」という発言からして、もしかしてあんまり家に帰れてない?

 

 ゲーセンで機器類の処分をしているFSocietyメンバー。そこへエリオットが現れると「どこへ行っていた」と詰め寄るメンバーたち。どうやらエリオットは3日間も音信不通で、その間に”計画”は成功していたらしい。ネットニュースを見ると世界的なシステムの停止や経済の危機、スティールマウンテンと中国のサーバーへの攻撃などが報じられている。そしてFSocietyへの支持が高まっているという記事も。

 自分の知らない間に計画が実行され、Mr.Robotやタイレルの姿もなく戸惑うエリオット。ダーリーンを残し「やるべきじゃなかった」と言いおいてゲーセンを後にする。

 

 AllSafeのオフィスで、財務責任者と会議をし会社をたたむかどうかで悩むギデオン。売上の8割を占めるEコープが危機的状況にあり、影響は避けられない。FSocietyの計画は世界経済を混乱させ、全銀行に影響を及ぼしカードも使用不可能になっていた。

 

 Eコープへ侵入するエリオット。えっそんな簡単に(笑)大混乱中だからうまく潜り込めた? 「なぜタイレルは計画の実行を許したのか」と考えるエリオット。社員が走り回るのを横目に「データを読み取り不能にする単純なワーム。ダーリーンが2時間で書いた。そんなもので世界が死んだ?」と半信半疑。事の真相を確かめるべくタイレルを探し秘書に会うも「辞めました」と教えられ途方に暮れる。

 

 そんななか社内のロビーでFSocietyの犯行ビデオを見るエリオット。仮面の男が「借金は帳消しにされた。我らはFSociety。我らは自由を手にした」と演説をぶっている。声からしてMr.Robotでもダーリーンでもない。というかFSocietyメンバーもみんなで興味深そうにビデオを見ている。

 

 ペットの火葬場にくるFSocietyメンバー。「ここならどんな物も黒焦げにできる」という明らかに非合法な営業をにおわせる男に金を払い、ディスクなどを次々燃やしていく。犬たちが燃やされたであろうかまどの中を眺めていた彼らだったが、ふいにトレントンが檻に入っていた犬たちを開放し始める(やはり当然のようにピッキングを嗜むハッカーたち)。それにモーブリー、ダーリーン、最終的にはロメロも加わってどこか嬉しそうに犬たちを逃がしていく。世界を変えたと信じて疑わないFSocietyメンバーたち、また一つ世界を良くしてしまった☆ …なんて。

 

 一方タイレルの所在がつかめずイライラ気味のエリオット、タイレルの自宅を訪ねるも留守のよう。

…外観だけ見ると世界最大のコングロマリットの元・副CTOにしちゃ、そこまででもない家だな~と思ったんですが…。もちろん内装は素敵だったし巨大なウォークインクローゼットもあったし、治安の良い高級住宅街に住んでるんでしょうが。庭付きではなく高層マンションでもないのか。

 そこへ妻のヨアンナが帰宅。内心キョドるエリオットを微笑みで威圧し、「どなた?」と聞く。仕事仲間だと答えた彼を上から下まで眺め「(ふーんお前みたいな身なりのやつがタイレルと仕事仲間ねーふ~ん)」とでもいいたげに(ゲスの勘繰りです)観察、「すぐ戻るわ。名前をうかがっても?」と返す。彼女の”嫌な感じ”を察知したタイレルはとっさに「オリーだ」と名乗る。本物のオリーご愁傷様(笑) すると「彼と最後に会ったのは3日前。彼が心配なの。様子が変だった」と言い、スウェーデン語(おそらく)で何事か呟くヨアンナ。身の危険を感じたエリオットは急ぎその場を去る。意味深ですねえ…。

 

 Eコープ執行副社長が生放送でテレビのインタビューを受けている。後ろに控えるアンジェラ。ポジティブに受け答えしようとする副社長に容赦なくかけられる質問。FSocietyが世間から支持され始めているため「FSocietyの攻撃には正当性があったのでは」、バックアップが破壊されたことを受け「”心配するな”で済むと思いますか」と詰問。答えに窮した副社長は本音を話し始める。ざわつく社員やアンジェラの前で「私の人生は終わりだ」と嘆き、おもむろにバッグから拳銃を取り出す。そして映像が配信されたまま引き金を引く。

 ”極悪企業”と蔑まれ、全財産を失い、社会的信用もどん底に落ちてしまったことに耐えかねた副社長。マスコミが引き金を引いてしまったようにも見えますがバッグに拳銃仕込んでた時点で最初からそのつもりだったよね。損害を被った側のはずなのに世界中から敵視されるようになってしまったEコープ。この先は神経の図太い人しか生き残れなそう。もちろんその中に身を投じてしまったばかりのアンジェラも含めて。

 

 目の前で自殺の現場を見てしまいショックを受けるアンジェラに、CEOのプライスが紳士的に声をかける。コルビーのように自分も感心させてくれ、午後からの記者会見にも広報担当として来るといい、と話すが呆然自失のアンジェラ。プライスは返り血を浴びたパンプスをみてお札を出し「新しいものを買いなさい」と差し出す。特別待遇で入社しただけあって直々に気にかけてくれる。いいやつもいるじゃーん。★と思ってたのに裏切られましたね…アンジェラも途中まで満更でもなさそうにしてたと思うんですが

 

 タイレルがどこにもおらず、駐車場に戻ってくるエリオット。何かヒントがないかと車中を探し回る。トランクは空、カーナビには履歴なし。ふと気づいてサンルーフを開けると、中からサングラスが。つるをいじって何かを思いついたエリオット、えいやっとつるを引き抜く。と、なんと先端にUSBメモリが!!何そのスパイが使うアイテムみたいな小道具は!カッコい~い(笑)

(カルバンクラインから実際に販売されてるものみたいです)

 結局それ以外に手掛かりはなく、一人車の中で絶叫するエリオット。わあ~またイカレ度が上がってきましたね(イカレ度とは)。

 

 ゲーセンでパーティの準備をするFSocietyメンバーたち。ダーリーンが”世界の終末パーティー”と書かれたチラシを用意し「最後の後始末よ」と3人に配る。★よく見ると下の方に「DJ MOBLEY」って書いてあるんですけど(笑)このチラシはダーリーンが作ったんだよね?ということはモーブリーがFBIに目を付けられてしまったのってダーリーンのせい…?w★ノリノリなダーリーンに対し、3人は心なしか落ち込み気味。ロメロは「リーダーが勝手に計画を実行し後始末から逃げた」とこぼす。せっかく数か月かけて計画を練ってきたのに、肝心の計画の実行は知らぬ間に済んでしまっていた。”自分たちがやってやった”という実感が湧かないのかも。つくづくMr.Robot = エリオットには振り回されてますね。

 

 カフェか何かのインターネットコーナーに入り、タイレルの車で見つけたUSBを見てみるエリオット。パスワード入力を要求されるも「ヤツ( = Mr.Robot)が知ってるなら俺にも分かる」とあっさり攻略。あっ、そう…。

 中には”遊歩道での大失敗”というタイトルの動画が。それはエリオットがE2でMr.Robotに突き落とされた場面をどこからか撮影したもの。スケボーで遊ぶ子供たちの後ろで、手すりに座ったエリオットがひとりでに落下していく。何度も巻き戻しては再生し、”すべてが自演行為だった”という事実に直面するエリオット。

 

 この動画、”vimeo”という動画共有サービス(実際ある)に

「Epic fail on the Coney Island Boardwalk. Hilarious!

/ コニーアイランド遊歩道での大失敗。超ウケる!(意訳)」

なんてキャプション付きでアップされています。動画の最初はスケボーをしている子供を追った映像だったから、子供達のうちの一人が撮った動画をサイトにあげて、それをMr.Robotが拾ってきたってことかな。でもMr.Robotは = エリオットなわけだから、自分の失敗シーンを後生大事に隠し持っておいたの?それともこのUSBは現実には存在しないとか。

 

 幻覚のMr.Robotと対話したいというのに”Mr.Robotなど現実にはいなかった”ということを見せつけられて「すべては俺がやったことだといいたいのか」と怒り気味なエリオット。まあ対外的に見れば全てエリオットがやったことで間違いないんだけど、本人の中では”エリオット”と”Mr.Robot”は別人格だし、Mr.Robotの人格が上に出てきているときは”エリオット”の意識は飛んじゃうみたいですからね。「おい全部の責任俺になすり付けんな!」って言いたいのも分かるかな(笑)

 Mr.Robotを出現させるためにエリオットは強硬手段に出る。店の人に電話を借り自首しようとするエリオット。堪り兼ねてMr.Robotが現れる。おぉ~エリオットの目論見通り。

 

 ブティックで新しい靴を試すアンジェラ。血糊つきのパンプスを見て「聞くのが恐ろしい」と話す店員。しかしすぐに思い至ったようで「確かあなたの職場は…ではこれはテレビに出てきた男性の?」と聞いてくる。肯定するアンジェラに重ねて「あんなことの後に靴を買いに来るとは、随分冷たいんですね」「よく働けますね、あんな嘘つきの集団と」と言いたい放題。さらに「分かってるの」と返そうとするアンジェラに「口調が似てきてますよ、良心を取り戻して」「お節介でしょうが染まってはだめです」「仕事が必要?そんな理由で?あきれた」と畳みかける。キレたアンジェラは「何様のつもり?次はプラダに行くわ」と言い捨てる。

 

 いくら話題沸騰中のEコープに勤めているからといって、親しくもない店員にそんなことを言われる筋合いはない!って感じです。視聴者はアンジェラが実際に崖っぷちにあったのを知っているし、いくら民衆がEコープへの返済に苦しめられていたとはいえ詐欺で借金を作らされたわけでもないでしょうに、こいつ調子いいな~と思わずにはおれません。これから先行きの厳しくなっていくであろう時に上客を一人逃してしまいましたね。

 しかし一見感情移入しやすそうに見えるアンジェラも、高級店を引き合いに出し「私はお金を持っているのに」と仄めかしているところが、店員の危惧通り「染まってしまった」のではないかと感じさせる…。敗北感を顔ににじませる店員と、ちょっと後悔してそうなアンジェラの表情。まだ染まりきってはいないみたいですけど、先行きが不安ですね…。★S2を見てからS1のアンジェラを見返すと、別人ではないかと思うほどの変わりぶりにびっくりします。ファッションが強気でクールな印象になったし、しゃべりも高圧的な…よく言えば自信にあふれた物言いに。”染まりきってしまった”S2のアンジェラの空回りっぷりは、時々見るのが辛くなるくらい…。

 

 Mr.Robotを呼び出すことに成功したエリオット。ふざけるMr.Robotとガチギレのエリオット。Mr.Robotを壁際に追い詰め首を絞めるエリオットだが、「周りにどう見えてるか考えろ」と言われ、三人称視点でエリオットが映される。

 

 そこには、壁に一人背を預け、自分で自分の首を絞めるエリオットの姿。周囲の客は困惑し「なにアイツ…」と遠巻きに眺めている。

 

 そうそうこれですよ私が見たかったのは!!

 Mr.Robotがエリオットの幻覚だというのが発覚しても、じゃあ今までMr.Robotの出ていたシーンはどうなってたんだ?!って疑問は残りますよね。今回のこれを見るに、エリオットは現実の世界で誰に憚ることもなくMr.Robotと会話していた、ということになりますが…おいおいとんでもないイカレ野郎だな!!あっ今さらか~!

 

 エリオットとMr.Robotが二人一緒に存在していたシーン、例えばE1で初めてゲーセンに来た時。扉を開けてくれたロメロはMr.Robotの方を一切見ず、エリオットの方だけを見て中に誘います。ロメロからすれば「コイツ今まで何回もここに来てるのに何で自分で入ってこないんだよ?」って不思議だったでしょうね。今見返すとそんな訝しげな表情に見えてきます。また、ゲーセンの中の椅子に座っていたダーリーン。視聴者から見ればMr.Robotがしゃべりながらエリオットを案内しているシーンですが、彼女からすればエリオットが一人でぶつぶつ言いながらウロチョロしているだけ。彼女の顔も「何だコイツ…きも…」って言いたげに見えてくる…(笑)

 それからE2でMr.Robotがダーリーンに「次の計画を教えて」と詰め寄られるシーン。Mr.Robotのすぐ後ろにエリオットが控えていて、役割に応じて2人の人格が入れ代わり立ち代わりしていることがイメージしやすいシーンだと思います。逆に「ここどうなってんの?」と思うのはE3。エリオットのデスクにMr.Robotが来て、「あの赤毛のおねーちゃんイケてる~~」とかなんとか会話するとこです。エリオットは完全に誰かと会話をしていて、すぐ近くには同僚たちがいる。赤毛のおねーちゃんはこちらをチラッと振り返っただけだったし、デスク周りの人たちは関心も示さない。声は聞こえてると思うんだけど…。そのあとに2人がバーで吞むシーンでも、Mr.Robotと会話しているエリオットのすぐ近くを店員が通りますが、ノーリアクション。そんなこといったらこのE10で先ほどエリオットが店員から電話を借りたとき、Mr.Robotと言葉を交わすエリオットを店員さんは間近で見ているはずですが特に騒ぎにはなりませんでした。

 

 ともかくまとめると、二人が一緒に行動しているとき、エリオットが主人格の場合Mr.Robotの声は周囲の人には聞こえていないけど、エリオットが架空の存在とお喋りをしている状況はバッチリ見られてしまっているみたい。逆にFSocietyのメンバーの前などMr.Robotが必要とされている時はエリオットの体をいつのまにか乗っ取っている、と。今までよく生活できてたよね、エリオット…。

 

 カフェ中の視線を一身に集めるなか、タイレルの居場所を教えろと迫るエリオット。Mr.Robotは「彼とは良い取引をした」と言うだけで具体的なことは教えない。「俺だけじゃない、お前も(タイレルの行方を)知っているはずじゃないか」と言うMr.Robotに、エリオットは「俺はお前じゃない」と返す。するとMr.Robotは「証明してやる」と言って、店内の客に適当にケンカを売りに行く。壁際に突っ立ったまま見守るエリオット。しかしMr.Robotが客に殴られた瞬間、立場は逆転した。殴られて床に倒れるエリオットと、彼を見下ろすMr.Robot。人格の入れ替わりについて、主導権はMr.Robotに握られているみたい。空想に負けちゃうエリオット君。

 Mr.Robotはそんな彼に「本来は俺が預言者でお前が神の立場なんだ」と言う。そうだよね本来はエリオット本位で行動して、Mr.Robotはせいぜい脳内で助言するぐらいの立場のはずだよね、Mr.Robotはエリオットが生み出した空想のはずなんだから。主従が入れ代わっちゃってるね。Mr.Robotが主人格になっているときエリオットが意識を失ってしまうのがツライところ。

 

 最初は断ったものの、プライスの言う通り記者会見の会場にやってくるアンジェラ。またしても声をかけてくれるプライスに、アンジェラは「なぜこんな時でも自信満々なのか」と質問する。プライスは「(この事態は)たかが人間の仕業だ。私の後ろには世界最大のコングロマリットがある。その重みの前にはこの程度」と答える。アンジェラはさらに「なぜ私を雇ったのか。私の正体をご存知でしょうに」と聞いてみる。プライスは「君は若く、大胆。今必要な人材だ」と返す。たしかにアンジェラは全てを投げ打って大企業に立ち向いコルビーとの一騎打ちで彼の心も動かして見せたけど、それこそ世界最大のコングロマリットには優秀な人材なんて掃いて捨てるほどいるでしょうに。納得しないアンジェラに「誉め言葉は素直に受け取りなさい」と微妙にはぐらかす。

 

 ここまでは、優しく自信にあふれたクリーンな経営者の雰囲気。しかしプライスは直後に「(副社長が)自殺してくれて安堵した」「私は嫌悪するタイプだ」と故人を悪しざまに言い出す。そして先ほどと変わらない雰囲気で記者の前に立ち「我らが勇敢な仲間に黙とうを」と 原稿を読み出す。ほだされかけたアンジェラも「そういえばコイツお母さん殺した連中だったわー…」と現実に引き戻されたであろう。コルビーと違って一見穏やかな人物に見えるところがかえって怖い。タイレルを解雇するときもこんな感じで”いい人風”な話始めでしたよね~。

 

 ゲーセンで「世界の終末パーティ」を開催するFSociety。ビラを配ってそのへんの若者を招待し、指紋を残させて証拠を隠滅しようという目論見。計画が成し遂げられて「明日からどうしようか」と言うメンバーに、ダーリーンは「明日のことなんて今はどうでもいい。私たちのおかげでみんなが自由になった」とご満悦。でもやっぱりエリオットは来てないんだね。こういうパーティにエリオットがいることなんておよそ想像できないけどね。

 

 そのエリオットは空想の世界でMr.Robotと対話中。FSocietyの活躍とお金からの解放に沸き立つ民衆の中を、Mr.Robotの肩を借りて進む。タイレルを殺したんだろうと聞くがMr.Robotは答えない。お前は偽物だと拒絶するエリオットに

「世界は幻想でできている」

「広告と言う名の心理戦争」

「人々を洗脳し続けるメディア」

「SNSで作られる虚構」

「遺伝子組み換えの食品」

「21世紀以降”本物”は無くなった」

と演説し、

「そこで暮らしてきたお前に俺のことを偽物だなんて言わせないぞ、今後は家族一緒だ」

と迫るMr.Robot。母と幼少時代のエリオット、それにMr.Robotが寄り添って肩を組み

「孤独に苦しんだお前が俺たちを必要とした、だから俺たちは現れた」

「僕らは心の奥底にいる。僕らはお互い離れられない」

と宣言する、空想上の家族たち。もはや途方に暮れるエリオットにMr.Robotは「俺たちが作り上げた美しき殺戮の様を楽しめ」とアドバイス。

 

 ニュースでは株価が暴落するさまや世界中の暴動・デモが報じられている。タイレルの行方や自分のメンタルのことなんてもうどうでもよくて、自室で計画の成功をただ眺めるエリオット。そこへ誰かが彼を訪ねてきて…。

 

 Mr.Robotは  = エリオットなんだから彼の主張は少なからずエリオットの思いを反映しているはずですよね。この空想の中でMr.Robotが「21世紀以降本物は無くなった」と言う演説は今までエリオットが世界に対して思ってきたことの代弁か。彼は物事を真剣に考えすぎるタイプなのかも。もうちょっと力抜いて、気に入らないことはある程度無視していかないととんでもなく生きづらいよエリオット~。

 

 彼は目の前のもの全てに向き合おうとする結果頭の中でいろいろ考えてしまい、一人でストレスを抱えてしまうんではなかろうか。

 例えば彼は子供のころから孤独を恐怖し悲しんでいますが、同様に孤独を抱えていたスティールマウンテンの職員、ビル(E5)は猫ちゃんたちと幸せそうに暮らしていました(少なくとも表面上は)。彼だって頭の片隅で「俺の人生は孤独だなあ~」と思いつつ、普段はそれを極力忘れて見た目だけでも明るく過ごせるようにしていたと思うんですよ。前述の演説だって、民衆は事実を知らないのではなく普段はあまり意識していない、というだけの話じゃないですか。

 しかしエリオットがそういう”現実からの逃避”をしようとすると、「脳内から不都合な人物を抹消する」とか「意識を飛ばして記憶を放棄する」とか、ものすごくアクロバティックなやり方になってしまう。そしてちゃんとガス抜きをして過ごしている”普通の人たち”が彼にはただのバカにしか見えない。普通の人はもっと日常の中でゆる~く現実逃避をしているんだよエリオット~~。

 

 

 

 クレジット後のエピローグ。どこかの豪邸に黒塗りの車が入っていき、短髪の男性がパーティ会場へ入っていく。シックな会場の中心にはフィリップがおり、男性、ホワイトローズはフィリップとビジネスの話をする。

 

 FSocietyがEコープを破壊しようとしたのに手を貸したダークアーミー、そのトップのホワイトローズはまさかのEコープCEOと親密な仲、という展開。とはいえこの男性が女装してないホワイトローズだとは一瞬分からず(笑)、淡々と進んでいく会話を聞きながら「だれだコイツ…?」と悩む羽目になりました。

 そもそもダークアーミーがなぜFSocietyに手を貸してくれたのかは分からないままだったわけですが、S1最後の最後で増々謎の深まる存在に。ビジネスパートナーに打撃を与えて、何のうま味があるんですかねえ。

 

 そして二人の会話の内容。コンゴのコルタン鉱山がどうたら、という話をしたがるホワイトローズに対し、「今は問題が山積してるんだ」と若干うっとおしそうなフィリップ。問題というのはもちろん、FSocietyによる大規模ハッキングですよね。★そしてコンゴの方は”中国がコンゴを併合したがっている”というのにつながる内容みたいですね?そんなようなことがS2終盤で明らかになりますし、ホワイトローズは中国のお偉いさんでもあります。 ちなみに”コルタン”とは電化製品の部品に使える鉱石で、地球上の埋蔵量のうち80%はコンゴ国内にあるという説があるんだとか。

 なにより聞き捨てならないのは、プライスが「犯人を知っている」らしいという会話。”犯人”って、エリオットのこと?!プライスはFSocietyの正体を掴んでいるの…?ホワイトローズの方はエリオットと共謀しているわけですから当然知っているとして、プライスにもエリオットのことが割れているとしたらもうエリオットは終わりですね★でもこの段階ではエリオット = FSocietyというのはバレてなくて、一度は収監されるものの短期間でシャバに戻ってきてるんですよね。エリオットが自宅でしてた作業は個人のハッキングとベラを助けるために刑務所をハッキングしたくらいで、FSocietyとしての活動はゲーセンでしかしていないはず。こういう時のための「現実での暗号化(E1より)」ですからね。プライスが本当にエリオットのことを把握しているんだとしたら、彼を野放しにはしないと思いますが…。

 

 

 

 …という、S2に謎を残したまま終了したS1。

いくつかの謎が明らかになりすっきりした一方で、また新たな謎が湧いて出てきて混乱するばかりでした。まあそれが楽しいんですけどね!

 非現実であることがハッキリしたMr.Robotと、エリオットはどう付き合っていくのか?計画は実行されたがエリオットの、そしてMr.Robotの望みは本当に叶ったのか?アンジェラは世界を変えられるのか?ダークアーミーの正体は、そしてその目的は?

 ネタバレしてしまうと『Mr.Robot』は既にS3の制作が決定しているのでS2で完結はしないのですが視聴者を煙に巻くことに特化したS2もぜひ楽しんでいただければと思います。とりあえずS3はよ!